海外旅行の注意点:てんかんの持病がある場合

日本国内で約100万人以上いるといわれるてんかんの患者さんですが、医薬品の進歩により一部の難治性のケースを除いては、日常生活には支障がなく海外旅行も可能になりました。ここではてんんかんの持病がある方が旅行をする際のポイントをまとめています。

睡眠不足、過労はてんかん発作の誘因となることが知られています。適度な飲酒は発作に影響ないことが報告されていますが、飲みすぎは禁物です。小児場合はけいれん発作を誘発することが知られており、旅行中に最も頻度の高い病態となっています。フロリダの大手テーママークを訪れた子供の神経疾患で一番多かったのがけいれん発作であることが報告されています。

成人女性の場合、てんかん発作と月経との関連が指摘されています。女性ホルモンのプロゲステロンには抗痙攣作用があり、プロゲステロンの分泌が減少する月経開始の時期に発作が起こりやすくなります。旅行中に感染症にかかり抗菌薬を内服する際にも、注意が必要です。ペニシリン系、セプァロスポリン系、カルバペネム系、キノロン系、抗マラリア薬がけいれん発作を誘発することが知られています。

高度飛行中の航空機内の酸素分圧は、高度2500メートルの高地に相当するされ、低酸素状態は発作を助長するので、海外旅行で長時間飛行機に搭乗する方は注意が必要です。民間航空会社の80%以上で乗務員にてんかん発作の教育が行われており、50%以上の航空機で抗てんかん薬のジアゼパムが用意されています。しかしながら航空会社によって態勢に差があるので、頻繁に発作を起こす患者さんは、事前に確認したほうがよいでしょう。

海外旅行には時差がつきものです。時差による睡眠不足、過労はてんかん発作の誘因となります。人気観光地であるハワイの病院の救急医によると、同地を訪れる日本人において、初発痙攣発作がたびたびみられるとの報告があります。睡眠をとらないことが原因です。

原則的には時差に関係なく、内服を継続することで対処できますが、日付変更線を超えた場合には、1回多めに薬を内服しましょう。時差を伴う睡眠障害を軽減する薬剤にはメラトニンが海外で処方箋なしで入手できますが、てんかんの患者さんの場合は発作を誘発することがあるので避けたほうがよいでしょう。

抗けいれん薬を内服している患者さんは、出発前に医師の診察を受けて海外旅行用の診断書を書いてもらうことをお勧めします。医師が診断書に明記する項目としては、病名だけでなく発作のタイプと頻度、最近のコントロール状態、内服している薬品名、内服量などです。医師の連絡先も記載してもらい、緊急時に連絡が取れると便利です。

内服薬を多めに携行する場合には、入国審査や通関であらぬ誤解を受けないように診断書を見せ、内服薬は薬剤名が記されているタグのついた形で所持するとよいでしょう。てんかんの患者さんも含め、さまざまな病気を持つ人も、事前に十分余裕を持って計画を立てれば、安全な旅行が楽しめる時代になりました。